福岡市の事業所税とは?免税点・計算方法・申告のポイントを解説

福岡市内で事務所や店舗を構えていると、法人市民税や県税のほかに、「事業所税」という税金がかかる場合があります。

事業所税には床面積や従業者数による免税点があるため、小規模な会社では、そもそも課税されないことも多い税金です。

一方で、事業の拡大によっていつの間にか免税点を超えていたり、福岡市内の複数の店舗や営業所を合計すると課税対象になっていたりすることもあります。

今回は、福岡市の事業所税について、免税点や計算方法、申告漏れが生じやすいケース、非課税・課税標準の特例など、確認しておきたいポイントを整理します。

1.事業所税とは?

事業所税は、都市環境の整備や改善に必要な費用に充てるために設けられている目的税です。福岡市内の事業所等で事業を行う法人や個人が納税義務者となります。

事業所税には、事業所等の床面積を基準とする「資産割」と、従業者に支払った給与総額を基準とする「従業者割」の2種類があります。

資産割従業者割
課税の対象事業所等の床面積従業者に支払った給与総額
税率1㎡につき600円給与総額の0.25%
免税点市内の事業所床面積の合計が1,000㎡以下市内の従業者数の合計が100人以下

資産割と従業者割は、それぞれ別に免税点を判定します。

2.福岡県内ではどの市が対象?

事業所税は、すべての市町村で課税される税金ではありません。福岡県内では、福岡市のほか、北九州市でも課税されています。

なお、久留米市でもこれまで課税されていましたが、人口要件を満たさなくなったことから、2026年5月29日に課税団体の指定が取り消されました。同日以降に事業年度が終了した事業所には課税されません。一方、2026年5月28日までに事業年度が終了した事業所は、従来どおり申告・納付が必要です。

事業所の所在地によって課税の有無が異なるため、複数の市に事業所がある場合は、それぞれの所在地について確認が必要です。

3.「免税点」以下なら課税されない

福岡市では、次の場合、それぞれ課税されません。

  • 福岡市内の事業所床面積の合計が1,000㎡以下 → 資産割は課税されない
  • 福岡市内の従業者数の合計が100人以下 → 従業者割は課税されない

法人の場合、免税点の判定は原則として事業年度末日の状況で行います。福岡市内に複数の店舗や営業所、工場、倉庫などがある場合は、1か所ごとではなく、市内の事業所等を合計して判定します。

免税点を超えた場合は、超えた部分だけが課税されるわけではありません。例えば、事業所床面積が1,200㎡であれば、差額の200㎡ではなく、原則として1,200㎡全体を基礎に資産割を計算します。免税点は、基礎控除とは異なる仕組みです。

なお、免税点の判定では、非課税となる床面積や従業者は除きます。一方、課税標準の特例や減免の対象となる床面積・従業者は、判定からは除かれません。

従業者数の数え方にも注意が必要です。

  • 役員以外の65歳以上の方や障がい者(所得税・住民税の障害者控除の対象となる方)は、免税点の判定や従業者給与総額の計算上、従業者の範囲から除かれます。役員は、65歳以上や障がい者であっても除かれません。
  • パートタイマー(所定労働時間が正規の従業者の4分の3未満で、休暇・社会保険・賞与などが明らかに区別されている方)は、免税点の判定の人数には含まれませんが、従業者給与総額には含まれます。

従業者数が100人に近い会社では、単純な在籍人数だけで判断せず、事業所税上の従業者の範囲を確認することが重要です。

4.事業所税の計算例

資産割の例

福岡市内の課税対象となる事業所床面積が1,200㎡の場合

1,200㎡ × 600円 = 720,000円

従業者割の例

従業者数が120人で、事業年度中の課税対象となる従業者給与総額が6億円の場合

6億円 × 0.25% = 1,500,000円

一方、事業所床面積が950㎡、従業者数が80人で、ほかに合算すべき事業所等がない場合は、いずれも免税点以下のため、資産割・従業者割ともに課税されません。

ただし、福岡市では、今回の事業年度が免税点以下となり納付すべき事業所税額がなくても、前事業年度に納付すべき事業所税額があった場合には、申告書の提出が必要です。

したがって、「事業所税が発生しない=必ず申告不要」とは限りません。

5.事業所税の申告漏れが生じやすいケース

事業所税は、法人税や消費税に比べて馴染みが薄く、事業規模の拡大や事業所の増加をきっかけに、申告が必要になっていることに気付かないケースがあります。

特に、次のような場合には注意が必要です。

福岡市内に複数の事業所がある

店舗、営業所、工場、倉庫などが複数ある場合、それぞれが1,000㎡以下でも、合計すると免税点を超えることがあります。従業者数も同様です。

事業拡大によって免税点を超えた

新しい店舗や営業所の開設、従業者の増加によって、これまで免税点以下だった会社が課税対象になることがあります。

1,000㎡や100人に近い会社では、決算時だけでなく、事業所の新設や人員増加のタイミングでも確認しておくとよいでしょう。

賃貸オフィスなので関係ないと思っていた

建物を所有していなくても、ビルの一室を借りて事業を行っていれば対象となります。詳しくは、次の6.をご覧ください。

関連会社が同じ建物に入居している

同一家屋内で、親族や同族会社などの特殊関係者が事業を行っている場合は、「みなし共同事業」に該当し、特殊関係者の事業所床面積や従業者数を合算して免税点を判定することがあります。

会社単体では1,000㎡・100人以下でも、関連会社との関係によって判定が変わる可能性があります。

事業所を新設・廃止した

福岡市内に事務所、店舗、工場、倉庫などを新設・廃止した場合には、事業所税そのものが発生するかどうかとは別に、「事業所等の新設(廃止)申告書」の提出が必要となる場合があります。

福岡市では、次のいずれかに該当する場合に、新設・廃止の日から2か月以内に提出することとされています。

  • 前事業年度に納付すべき事業所税額があった場合
  • 新設・廃止した事業所の床面積が500㎡以上、または従業者数が50人以上の場合

法人市民税の設立・異動に関する届出だけを行い、事業所税の手続きを見落とさないよう注意が必要です。

6.賃借オフィスの共用部分にも注意

ビルの一室を借りている場合、資産割では、専用で使用している部分だけを見ればよいわけではありません。

廊下、階段、エレベーターホールなどの共用部分についても、一定の方法で按分した面積を事業所床面積に加えて計算します。

そのため、賃貸借契約書の専有面積だけを見て「1,000㎡以下だから事業所税はかからない」と判断すると、実際の事業所床面積と異なる場合があります。

福岡市では、ビルのオーナーが「事業所用家屋の貸付申告書」を提出する制度があります。正確な面積を把握できない場合は、貸主や管理会社に確認しましょう。

7.事業年度の途中で新設・廃止した場合

事業年度の途中で事業所等を新設・廃止した場合、資産割については、事業所を使用していた期間に応じた月割計算を行います。

新設した場合は、新設した月の翌月から事業年度終了までの月数を基礎として計算します。一方、廃止した場合は、事業年度開始から廃止した月までの月数を基礎として計算します。

また、同一の事業所内での増床・縮小、同一敷地内での新築・増築などは、事業所そのものの新設・廃止とは取扱いが異なり、原則として月割計算を行わず、事業年度末日の事業所床面積を基礎として計算します。

事業所等を新設・廃止した場合は、前述のとおり、一定の要件に該当すると、新設・廃止の日から2か月以内に「事業所等の新設(廃止)申告書」の提出が必要です。

事業所の移転、新店舗の開設、倉庫の新設などを行った場合は、法人市民税の届出とあわせて確認しておきましょう。

8.非課税・課税標準の特例・減免

事業所税には、施設の用途や事業内容などによって、「非課税」「課税標準の特例」「減免」が適用される場合があります。これらは似ていますが、それぞれ別の制度です。

非課税

公共性の高い一定の施設のほか、農林漁業、中小企業、福利厚生などに関係する一定の施設は、非課税となる場合があります。

非課税となる施設がある場合は、その部分を区分して計算し、申告の際に「非課税明細書」などに記載します。

課税標準の特例

協同組合などの一定の事業者や、一定の用途の施設については、課税標準の一部を控除して計算できる場合があります。控除割合は、対象となる施設等によって異なります。

適用する場合は、「課税標準の特例明細書」に対象となる施設や床面積、控除割合などを記載し、事業所税の申告に反映します。

課税標準の特例を適用するために、別途「減免申請」を行うわけではありません。

減免

減免は、非課税や課税標準の特例とは別の制度です。

福岡市では、学術文化の振興に寄与する施設や、中小企業対策など産業振興上配慮が必要な施設などについて、市税条例に基づく減免制度が設けられています。対象となる施設は、福岡市の「事業所税申告のしおり」で確認できます。

減免を受ける場合は、事業所税の申告書とあわせて「事業所税減免申請書」を提出します。施設の種類によっては、減免の要件を確認するための書類の添付も必要です。

非課税、課税標準の特例、減免は、それぞれ要件や手続きが異なるため、該当する可能性がある場合には区別して確認することが重要です。

9.申告と納付

事業所税は、市が税額を計算して納税通知書を送る方式ではなく、納税者が自ら課税標準や税額を計算して申告・納付する税金です。

  • 法人:事業年度終了の日から2か月以内
  • 個人:翌年3月15日まで

また、法人税のような申告書の提出期限の延長制度は、事業所税にはありません。

法人税や消費税などの申告期限と重なることも多いため、決算の際には、事業所税の申告が必要かどうかもあわせて確認しておくとよいでしょう。

まとめ

  • 事業所税には「資産割」と「従業者割」があり、それぞれ免税点(1,000㎡・100人)が設けられています。
  • 免税点を超えると、超えた部分だけでなく、課税対象となる全体を基礎に税額を計算します。
  • 従業者数は、役員以外の65歳以上の方・障がい者、パートタイマーの扱いに注意が必要です。
  • 福岡市内に複数の事業所がある場合や、特殊関係者が同じ建物で事業を行っている場合は、合算して判定することがあります。
  • 賃借している事業所でも対象となり、共用部分の床面積にも注意が必要です。
  • 非課税・課税標準の特例・減免は別の制度で、手続きもそれぞれ異なります。
  • 新設・移転・事業拡大・人員増加などをきっかけに、課税関係が変わることがあります。
  • 税額が発生しない場合でも、前事業年度の状況などによって申告が必要となる場合があります。
  • 法人の申告期限は延長できないため、決算スケジュールに組み込んでおくことが大切です。

福岡市内で事業所の新設・移転を予定している場合や、事業所床面積・従業者数が免税点に近づいている場合は、決算直前ではなく、事前に課税関係を整理しておくと安心です。

事業所や関連会社が多く判定が複雑な場合も、一緒に整理していきましょう。

※本記事は2026年9月時点の制度・公表情報をもとに作成しています。実際の適用にあたっては、最新の法令や福岡市の公表資料等をご確認ください。

本記事は、執筆時点の法令・制度に基づく一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。税制は改正されることがあり、具体的な取扱いはご状況により異なります。実際の判断・手続にあたっては、税務署等の公的機関や専門家にご確認ください。