福岡市の特定創業支援等事業とは?登録免許税の半額軽減と新規創業促進補助金を解説
福岡市で会社を設立しようとする方には、ぜひ知っておいていただきたい制度があります。「特定創業支援等事業」です。
この支援を受けて「受講の証明書」を取得すると、一定の要件のもと、会社設立時の登録免許税が半額になります。さらに福岡市では、登録免許税の負担を軽減する「新規創業促進補助金」も用意されています。
特に、登録免許税の軽減や新規創業促進補助金を利用するためには、法人登記前の準備・申請が必要です。会社を設立してから制度を知っても、これらのメリットは受けられません。
今回は、福岡市の特定創業支援等事業の仕組みと流れ、つまずきやすい点、資本金を決めるときの税務面の注意点を整理します。なお、本記事は制度の概要をご紹介するものです。
詳しい要件や手続きは、福岡市の公式ページや創業課でご確認ください。
1.特定創業支援等事業とは?
特定創業支援等事業は、国の認定を受けた創業支援等事業計画に基づき、福岡市と連携する事業者が実施する創業支援です。
創業に必要な4つの知識(経営・財務・販路拡大・人材育成)について、1か月以上にわたって支援を受けることで、福岡市から「受講の証明書」の交付を受けることができます。
この証明書を利用すると、会社設立時の登録免許税の軽減など、創業に関する各種メリットを受けられます。
2.証明書をもらえる方
主な対象者は、次の方です。
- 現在事業を営んでいない個人で、これから創業しようとする方
- 上記の創業から5年以内の個人または法人
注意点は次のとおりです。
- 2社目以降の創業となる方や、事業を承継した2代目の代表者となる方などは対象外です。
- 法人の場合は、代表者かつ発起人の方が受講する必要があります。
- 個人事業を法人成りする場合は、個人事業の開始から5年以内であれば対象になります。
3.証明書で受けられる3つのメリット
| メリット | 内容 |
|---|---|
| ① 会社設立時の登録免許税の軽減 | 株式会社・合同会社の設立時、登録免許税が資本金の0.7%から0.35%に軽減されます。株式会社の場合、最低税額15万円が7.5万円になります。 |
| ② 創業関連保証の特例 | 信用保証協会の創業関連保証について、通常より早い時期から利用できる特例があります。別途、保証審査があります。 |
| ③ 日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金 | 一定の要件のもと、貸付利率の引下げを受けられます。別途、融資審査があります。 |
登録免許税の軽減(①)と創業関連保証の特例(②)は、これから事業を営む個人と、開業から5年を経過していない個人事業主が主な対象です。
すでに法人を設立している方については、設立済みの会社の登録免許税を後から軽減することはできません。一方、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金については、要件を満たせば貸付利率の引下げの対象となる場合があります。
4.福岡市新規創業促進補助金
福岡市では、特定創業支援等事業の証明書を活用して登録免許税の軽減を受けて会社を設立する方に対し、「新規創業促進補助金」を設けています。
令和8年度(2026年度)の受付期間は、2026年4月1日から2027年3月31日までです。
補助額は次のとおりです。
- 株式会社:一律7.5万円
- 合同会社:一律3万円
主な要件として、
- 福岡市の特定創業支援等事業の証明書を活用して、登録免許税の軽減を受けること
- 新たに設立する会社の本社が福岡市内であること
- 新たに設立する会社以外に、経営に携わっている会社がないこと
- 福岡市の市税や延滞金の滞納がないこと
などがあります。
株式会社の場合を比較すると、次のようになります。
| 資本金100万円 | 資本金3,000万円 | |
|---|---|---|
| 登録免許税(通常) | 15万円 | 21万円 |
| 半額軽減後 | 7.5万円 | 10.5万円 |
| 補助金 | 7.5万円 | 7.5万円 |
| 登録免許税の実質負担 | 0円 | 3万円 |
補助の対象となるのは登録免許税に対するものです。定款認証費用など、その他の会社設立費用が補助される制度ではありません。
また、補助金は先着順で、予算に達した場合は受付期間中でも終了します。
5.受講から設立登記までの流れ
基本的な流れは次のとおりです。
- 受講の申込み:受講前に、福岡市への事前の同意申請が必要です(スタートアップカフェでの受講は不要)。
- 1か月以上の支援を受ける
- 証明書の発行申請
- 補助金の交付申請
- 法人登記の申請
- 実績報告
- 請求書の提出
特定創業支援等事業は1か月以上にわたって支援を受ける必要があり、証明書の発行にも数営業日かかります。会社設立の日程が決まっている場合は、直前ではなく、設立希望日から逆算して2か月程度前を目安に準備を始めておくと安心です。
6.受講できる支援事業の例
福岡市では、スタートアップ応援ネットワークFUKUOKA、福岡起業塾、さわら起業塾など、複数の特定創業支援等事業が実施されています。実施時期、受講方法、費用、募集状況などは事業ごとに異なります。
7.つまずきやすい点
登録免許税の軽減は設立後には受けられません
登録免許税の軽減を受けるためには、法人登記の申請時に証明書を法務局へ提出する必要があります。
補助金の申請も法人登記の前です
福岡市の新規創業促進補助金についても、法人登記前に交付申請を行う必要があります。
「会社を作ってから補助金を申請すればよい」と考えないよう注意が必要です。
福岡市以外で会社を設立する場合
登録免許税の軽減を受ける場合、福岡市が発行した証明書を利用できるのは、福岡市内に本店を置いて会社を設立する場合です。福岡市以外に本店を置く場合は、本店所在地の自治体が発行する証明書が必要です。
補助金は先着順です
受付期間内であっても、予算に達した場合には受付が終了します。
証明書には有効期限があります
証明書には有効期限があります。会社設立の日程が先になる場合には、証明書を取得する時期にも注意しましょう。有効期限の詳しい取扱いは、福岡市の公式ページや創業課でご確認ください。
8.資本金を決めるときの税務の注意
登録免許税は資本金の額によって変わります。
株式会社の場合、通常は資本金の0.7%で、最低税額は15万円です。特定創業支援等事業による軽減を受けると0.35%となり、最低税額は7.5万円になります。
ただし、会社設立時の資本金を決めるときは、登録免許税だけでなく、消費税との関係にも注意が必要です。
事業年度開始の日における資本金の額が1,000万円以上である新設法人は、原則として設立1期目から消費税の納税義務が免除されません。
なお、資本金が1,000万円未満であっても、インボイス発行事業者として登録している場合や、特定新規設立法人に該当する場合など、他の要件によって消費税の課税事業者となることがあります。
資本金は税金だけでなく、創業後の運転資金や金融機関・取引先からの見え方にも関わります。補助金や登録免許税の負担だけで決めるのではなく、事業計画や資金繰りも含めて検討することが大切です。
9.会社を設立した後の手続き
会社を設立したら、それで手続きが終わるわけではありません。
税務署、県税事務所、市への税務関係の届出のほか、会社の状況によっては社会保険や労働保険などの手続きも必要になります。
福岡市では、市内で法人を設立した場合、法人市民税の設立申告書を設立の日から10日以内に提出します。
具体的な手続きについては、当事務所の「会社設立時の届出チェックリスト(博多区・大野城市・春日市)」もあわせてご覧ください。
まとめ
福岡市の特定創業支援等事業を活用すると、一定の要件のもと、会社設立時の登録免許税を半額にすることができます。
さらに福岡市では、新規創業促進補助金として株式会社は7.5万円、合同会社は3万円の補助を受けられる制度があります。
一方で、登録免許税の軽減や補助金を利用するためには、法人登記前に必要な手続きを済ませておくことが重要です。特定創業支援等事業の受講には1か月以上かかるため、会社設立の日程が決まったら、余裕を持って準備を始めましょう。
また、会社設立時には、設立時期や資本金の設定によって税務上の取扱いが変わる場合があります。
設立の時期や資本金の設定、設立後の届出や経理の立ち上げまで、一緒に整理していきましょう。
制度の詳細・お問い合わせ先
特定創業支援等事業や新規創業促進補助金の詳しい要件・手続きは、福岡市の公式ページでご確認ください。
福岡市 経済観光文化局 創業推進部 創業課
電話:092-711-4455(平日 9時〜12時、13時〜17時)
※本記事は2026年9月時点の福岡市の令和8年度の公表情報をもとに作成しています。補助金は先着順で、受付状況や支援事業の内容は変更されることがあります。最新の情報は福岡市の公式情報をご確認ください。
本記事は、執筆時点の法令・制度に基づく一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。税制は改正されることがあり、具体的な取扱いはご状況により異なります。実際の判断・手続にあたっては、税務署等の公的機関や専門家にご確認ください。


